- 会計監査
2023.05.10
金融庁による内部統制報告制度に関する基準等の改訂について
金融庁は、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」を公表しました。
当改訂は、経営者が内部統制の評価範囲の検討に当たって財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性を適切に考慮していないのではないか等の、内部統制報告制度の実効性に関する懸念が指摘されていることを背景としており、財務報告に係る内部統制の評価及び報告の実務に影響を与える点として以下が挙げられます。
【経営者による内部統制の評価範囲の決定】
評価範囲の決定にあたり、評価対象とする重要な事業拠点や業務プロセスを選定する指標について、例示されている「売上高等のおおむね3分の2」や「売上、売掛金及び棚卸資産の3勘定」を機械的に適用すべきではないことが記載されました。
なお、当該例示については、基準及び実施基準における段階的な削除を含む取扱いが今後検討されることが触れられています。
【ITを利用した内部統制の評価】
ITを利用した内部統制の評価について、一定の頻度で実施することについては、経営者は、IT環境の変化を踏まえて慎重に判断し、必要に応じて監査人と協議して行うべきであり、特定の年数を機械的に適用すべきものではないことが明確化されました。
【財務報告に係る内部統制の報告】
内部統制報告書において、経営者による内部統制の評価の範囲について、重要な事業拠点の選定において利用した指標とその一定割合等の決定の判断事由等を記載することが適切であるとされました。
また、前年度に開示すべき重要な不備を報告した場合における当該開示すべき重要な不備に対する是正状況が付記事項に記載すべき項目として追加されました。
当意見書は、2024年4月1日以降開始する事業年度における財務報告に係る内部統制の評価及び監査から適用することとされています。
また、当意見書の前文においては、本改訂の審議の仮定で問題提起があった以下の点について、法改正を含む更なる検討が必要な事項であるとして、中長期的な課題とされています。
■サステナビリティ等の非財務情報の内部統制報告制度における取扱い
■ダイレクト・レポーティング(直接報告業務)の採否
■内部統制監査報告書の開示の充実に関し、内部統制に関する「監査上の主要な検討事項」の採否
■訂正内部統制報告書に関する監査人による関与の在り方
■経営者の責任の明確化や経営者による内部統制無効化への対応等を目的とした課徴金や罰則規定の見直し
■会社法に内部統制の構築義務を規定する等、会社法と金融商品取引法の内部統制の統合
■会社代表者による有価証券報告書の記載内容の適正性に関する確認書における内部統制に関する記載の充実
■臨時報告書における内部統制の取扱い
詳細は金融庁の報道発表資料をご参照ください。
金融庁報道発表資料:https://www.fsa.go.jp/news/r4/sonota/20230407/20230407.html