平成24年3月22日付で、監査・保証実務委員会研究報告第25号「不適切な会計処理が発覚した場合の監査人の留意事項について」を公表している。これは近年の上場会社において不適切な会計処理が発覚した場合の事例を基に、その多くの場合に共通する事項を整理し、監査人として適切な対応を行うための留意事項を取りまとめたものです。不適切な会計処理発覚後の時系列的な状況の整理と監査人側の留意事項等及び対応を要する事項をまとめており、企業の実務担当者を含めて理解が必要です。また、ポイントごとに簡単にして情報を発信していきたいと思っております。

平成23年4月1日以降開始する事業年度の期首以降の「会計上の変更」や「過去の誤謬の訂正」に対して、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」が適用されることとなっています。以下に対応が求められる内容を整理しました。

【会計上の変更】

本会計基準では、「会計方針の変更」、「表示方法の変更」、「会計上の見積りの変更」を「会計上の変更」としています。

1)会計方針の変更

会計方針とは、財務諸表の作成にあたって採用した会計処理の原則及び手続をいいます(→今回、表示方法は、別に定義されました)。①会計基準等の改正に伴う会計方針の変更の場合、②①以外の正当な理由による会計方針の変更の2つに分類されます。 なお、会計処理の対象となる会計事象等の重要性が増したことに伴う本来の会計処理の原則及び手続への変更、新たな事実の発生に伴う新たな会計処理の原則及び手続の採用、連結または持分法の適用の範囲に関する変動について、これら3つの事象は会計方針の変更に該当しないことになります。

本会計基準の適用後は、変更後の会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用します。つまり、遡及適用による累積的影響額は表示する財務諸表のうち、もっとも古い期間の期首の資産、負債及び純資産の額に反映させ、表示する過去の財務諸表には、当該各期間の影響額を反映させることになります。例えば、金融商品取引法の開示制度では、前年度1期分です。ただし、上記の原則的な取り扱いが実務上不可能な場合には、遡及適用が可能となるもっとも古い日から将来にわたり新たな会計方針を適用するとされています。

2)表示方法の変更

会計方針の変更時には、変更の内容、理由に加え、過去の表示期間について影響を受ける財務諸表の主な科目に対する影響額や表示されている財務諸表のうち、もっとも古い表示期間の期首の純資産に反映された過去の累積的影響額などの注記が求められます。また、表示方法を変更した場合、表示する過去の財務諸表についても当該方法を適用し、遡及的に財務諸表の組替を行います。また、組替した場合、その内容、理由、金額などを注記することになります。

3)会計上の見積の変更

会計上の見積の変更は、新たな情報によって生じるものであるとの理由から、遡及処理せず、将来にわたって変更されるもの(→当期以降の財務諸表において認識する)としています。
つまり、過去の見積の方法が見積もり時点で合理的ならば、過去の誤謬の訂正には該当しません。過去の誤謬の訂正とは、区別して考える必要があります。
また、この場合、当該見積の変更の内容、当期への影響額などを注記することとなっています。

なお、減価償却方法は、従前どおり会計方針として扱いますが、その変更は、会計方針の変更を会計上の見積もりの変更と区別することが困難な場合に該当するものと取り扱っています。したがって、会計上の見積もりの変更と同様に将来にむかって会計処理を行うことになります。

【過去の誤謬の訂正】

誤謬とは、(1)財務諸表の基礎となるデータの収集または処理上の誤り、 (2)事実の見落としや誤解から生じる会計上の見積りの誤り、(3)会計方針の適用の誤りまたは表示方法の誤りとされています。

本会計基準では、過去の財務諸表における誤謬が発見された場合は、原則として、過年度の財務諸表を遡及修正(=修正再表示)することになります。つまり、今後は、当期の損益で修正(=前期損益修正項目として扱う)することは行われません。また、過去の誤謬の内容、表示期間について影響を受ける財務諸表の主な表示科目等への影響額、最も古い表示期間の期首の純資産への累積的影響額等を注記します。

本会計基準は、今後の会計実務に与える影響は非常に大きいと考えられますが、本基準のすべての事項には、財務諸表利用者への重要性が考慮されています。また、実際の適用に当たっては、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準及び同適用指針、ならびに関連規則の詳細を確認することが望まれます。

金融庁は31日に東日本大震災で被災した企業等を対象として特例措置を発表しております。

その概要は、
(1)震災により本来の提出期限までに有価証券報告書・四半期報告書の提出が無かった場合でも本年6月まで提出期限の延長を認める
(2)震災により有価証券報告書を提出できない3月決算企業等について9月末まで提出期限の延長を認める方向で検討する
(3)「震災により」とは間接的な影響を含む
(4)臨時報告書については地震によりその作成自体が出来ない場合には、その事態が解消後速やかに提出すれば良い
となります。

詳しくは金融庁のHPにてご確認ください。

平成22年12月16日に税制改正大綱が発表されました。
基本的な方針としては、国内企業の競争力を強化するという観点から、
法人実効税率を引き下げつつも、課税ベースの拡大を図り、財源確保を図っています。

盛り込まれた法人課税の主な内容は以下のとおりとなっています。

【法人税率】

平成23年4月1日以降に適用される法人税の税率は普通法人で25.5%、
中小法人で25.5%(年800万円以下は15%)となります。
なお、法人住民税も0.87%引き下げられます。

【減価償却】

平成23年4月1日以降に取得する減価償却資産の定率法の償却率を
定額法の償却率の200%に縮小します。

【欠損金の繰越控除】

控除限度額をその事業年度の繰越控除前所得の
80%に制限他方、欠損金の繰越機関を9年に延長します(中小法人は存置)。

【貸倒引当金】

適用法人を銀行その他などこれらに類する法人及び中小法人等に限定されます。
なお、3年間にわたる経過措置があります。

【寄付金】

一般寄付金の損金算入限度額が1/2になります。

【グループ法人税制】

解散が見込まれる100%グループ法人株式の評価損を計上
できないこととなるなどグループ法人税制の整備を図ることになります。

【棚卸資産】

切放低価法は、廃止となります。なお、当初事業年度においては経過措置を設けています。

【中間納付制度】

仮決算による中間税額が6/12を超える場合には、仮決算による中間申告書を
提出できないこととなります。

その他にエネ革税制の廃止、試験研究費の税額控除の限度額の特例の廃止、
雇用促進税制や環境関連投資促進税制などが見直しまたは新設されており、今後の動きに留意が必要です。

IFRSに関して、一部に誤解を招く情報が流布されているのではないかという指摘があるなかで、
金融庁は平成22年4月23日に「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」を公表しています。
専門家でない方々にもご理解いただけるよう、正確性よりもわかりやすさに重点を置いて作成しています、
とあって非常に読みやすい内容となっております。

一部の内容を抜粋すると、
・全面的なITシステムの見直しが必要か
・監査人の対応が厳しくなるのではないか
・英語版IFRSを参照する必要があるのか
など、ちょっとした息抜きにいかがでしょうか。

平成21年9月に東京証券取引所の「上場制度整備の実行計画2009」に基づき上場規程等が改正され「独立役員」の制度が設けられ、平成22年3月1日以後に終了する事業年後に係る定時株主総会終了の日の翌日までに「独立役員」の確保が必要となりました。したがって3月決算会社の場合今年の定時株主総会開催日の翌日までに対応が必要となります。「独立役員」の制度の趣旨は一般株主と利益相反が生じる恐れのない役員を加えることにより、企業経営において一般株主にも配慮した意思決定がなされることを外形的に担保することにあります。

「独立役員」に関する情報は、指定理由や一定の利害関係を有する社外取締役や社外監査役を独立役員に指定する場合のその特段の理由や一定事項の追加開示が、定時株主総会終了後のコーポレート・ガバナンス報告書において開示が必要となります。

上場会社においては「独立役員」の制度趣旨を踏まえ、適切な人選をする準備を早急に進める必要があると思います。

平成21年12月22日に、平成22年度税制改正大綱が公表されました。

民主党が与党となって初めての税制改正で、「第4章1.平成22年度税制改正の考え方」において明らかにされているように、「控除から手当てへ」等の観点からの扶養控除の見直し、国民の健康の観点を明確にしたたばこ税の税率の引き上げ、「新しい公共」を支える市民公益税制の拡充、納税者の視点に立った租税特別措置等の見直しなどの措置を講じられています。

資本に関係する取引等に係る税制

企業グループを対象とした法制度や会計制度が定着しつつある中、法人の組織形態の多様化に対応し、課税の中立性や公平性を確保する観点から見直しを図っている。

1)グループ内取引等に係る税制

(1)100%グループ内法人間の資産の譲渡取引等

(2)100%グループ内法人間の寄附

支出法人では全額損金不算入。受領法人では全額益金不算入。

(3)100%グループ内法人間の資本関連取引

(4)中小企業向け特例措置の大法人の100%小法人に対する適用

資本金の額等が5億円以上の法人等の100%小法人には以下の適用なし

(5)連結納税制度

(6)その他所要の措置を講じる。

2)資本に関係する取引等に係る税制

(1)みなし配当の際の譲渡損益

(2)清算所得課税

清算所得課税を廃止し、通常の所得課税に移行。その際、期限切れ欠損金の損金算入制度 を整備する等の所要の措置を講じる。また、連結子法人の解散を原則として連結納税の承認の取消事由から除外。

(3)その他

これらは1)(3)ⅱ)、(4)、(5)ⅰ)ならびに2)(3)ⅲ)を除き、平成22年10月1日から適用。

以上の法人課税関係のほか、国際課税で外国子会社合算税制等の見直しでトリガー税率の25%から20%への引き下げなども大綱によって明らかにされているが、法律として成立するまでその詳細は確定せず、内容が変更される可能性があることに御留意ください。

【IFRSの収益認識基準】

IFRSの導入をめぐっては、収益の認識基準について出荷時点から検収時点への変更が必要になることが各面で大きく取り上げられています。 収益の認識は、IAS第18号「収益」とIAS第11号「工事契約」がIFRSの主な会計基準となっており、ここで示されている「リスクと経済価値の移転」という考え方に照らしてみれば、通常、顧客の検収が終了しなければ売り手のリスク負担は解消しないと考えられ、そのことによって現在広く実務で適用されている出荷基準についての見直しが迫られている、との状況にあります。

【MOUプロジェクト】

一方、海外に目を向ければ、米国証券取引委員会(SEC)は、2014年から米国企業にIFRSを適用するか否か、2011年までに判断を下すとされていますが、その判断においては国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)が目下共同で進めているMOUプロジェクトの達成度を見極めることとされています。MOUプロジェクトの中の一つ、「収益認識」プロジェクトは、2008年12月に「顧客との契約における収益認識に関する予備的見解」というディスカッション・ペーパー(以下、「DP」)を公表し、今後、2010年第2四半期中に公開草案を公表し、2011年上半期中には新たなIFRS会計基準を公表するものとしています。

わが国では、上場企業にIFRSの適用を義務化することの可否が2012年に判断される予定ですが、義務化が決まれば、2015年にも予定される強制適用の時点で収益認識についての基準は、現行のIAS第18号等に代わって上記の新しい基準となっていることが予想されます。

【DPのアプローチ】

DPでは、従来の「リスクと経済価値の移転」等のアプローチとは異なる、新しい収益認識の考え方が示されています。すなわち、企業が顧客と契約を締結すると、その契約による権利(対価請求権)と義務(財・サービスの提供義務)の両者が認識されます。そして、財・サービスの提供によって履行義務が充足、消滅し、権利と義務の差額が生まれますが、この差額を収益として認識する、という考え方です。また、履行義務の充足は、顧客が約定資産の支配を獲得したとき、とされます。

イメージとしては、売買契約が成立した時に、資産側に対価を受け取る権利(売掛金のようなもの)が認識されるとともに、負債側に履行義務が(販売価格に基づいて)認識されます。この時点では資産側負債側同額で正味ゼロです。その後、売主が物を買主に引き渡すことによってその分の履行義務が消滅し、その分プラスの正味ポジションが生じる、すなわち、収益が計上される、というものです。
このアプローチによった場合、従来製品保証について製品保証引当金を計上していたこれまでの会計実務から、製品保証というサービスの履行義務の充足に従って、収益計上しなければならないことや、現行の工事進行基準による収益認識から、完成した一部分の物理的な物の引き渡し(財の支配の移転)がなければ、部分的な収益認識も行われなくなる、などの影響が考えられます。

IFRSの適用検討をプロジェクトとして始動している企業や、IFRSの適用を視野に入れながら新しい基幹系システムの構築を行っている企業においては、現行のIFRSのみではなく、FASBとIASBによるMOUプロジェクトによる新基準の検討状況もにらみながら、種々の可能性への対応の可否も検討していく必要があります。

国際財務報告基準(IFRS)はアドプション(導入)の流れが明確となっており、税務(特に法人税)との関係のあり方を検討する必要があります。平成21年10月2日に経団連は「平成22年度の税制改正に関する提言」の中で、「国際会計基準とのコンバージェンスの流れの中で、わが国会計基準の改定が相当見込まれることから、個別財務諸表、個別会計基準のあり方についての抜本的な見直しを含め、税と会計の基本的なあり方の整理を行う必要がある」と指摘しています。

IFRSの特徴として、原則基準や経済実体重視といわれていますが、原則に従う限りは企業ごとに会計処理や会計方針が異なることがあります。また、理論的整合性の重視に伴い資産負債アプローチや時価主義のさらなる導入が促進される結果、新たに検討されている包括利益概念は課税所得の基礎となる現在の利益概念と整合しないことは明らかと考えられます。

そこで,企業会計の連単分離という考え方の採用を検討することになります。連結財務諸表はIFRSを適用して作成し,個別財務諸表は,会社法に基づく配当金計算及び税法に基づく課税所得計算の目的に一致させるために日本独自基準で作成する方向となるのではないでしょうか。企業内部では、現在の会計情報収集・作成機能を継続的に運用させた上に、IFRS開示事項に係る会計情報の収集・作成機能を新たに追加するといった対応が求められることとなると考えられます。

2009年(本年)2月4日に金融庁の企業会計審議会から「我が国における国際会計基準の取り扱いについて(中間報告)(案)」が公表され、2009年6月30日に最終の中間報告として、「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」、いわゆる日本版ロードマップが公表され、2012年を目途にIFRS強制適用の最終決定が行われる予定となっています。
最近、IFRS関連の書籍、雑誌などが数多く出され、またセミナーなども各地で行われています。

ではそもそもIFRSって何のことをいい、誰が作成しているのでしょうか?

ほとんどの本では最初の章に記載されている内容で、読み飛ばすことも多いのではないかと思います。一方で、IFRSが順次公表されている中で,IFRSとは一体何のことをいい、誰が作成しているかをしっかり把握しておけば、今後IFRS関連の書籍を読むうえでも非常に有益ではないかと思います。そこで、「そもそもIFRSって何だろう?」について確認したいと思います。

IFRSとは、日本語で「国際財務報告基準(書)」、英語で「International Financial Reporting Standards」と言います(以下IFRSという)。基準(書)ですから、物理的には本ということになります。実はIFRSには前身となる基準書があり、IAS(日本語で「国際会計基準(書)」、英語で「International Accounting Standards」)と言います(以下IASという)。IFRSは、2009年11月8日現在第8号まで、IASは第41号まで公表済みで現在も有効でですが、今後はIFRSとして公表されるため、IASが増加することがありません。

さらにIFRS、IASともに解釈指針というものがあります。それぞれ、IFRIC(日本語で「国際財務報告解釈指針(書)」、英語で「International Financial Reporting Interpretations Committee」といいます)、SIC(日本語で「解釈指針(書)」、英語で「Standing Interpretations Commitee」といいます)です(以下それぞれIFRIC、SICという)。IFRICは18号まで公表されており、SICは32号まで公表済みで現在も有効ですが、今後はIFRICとして公表されるためIASと同様今後SICが増加することはありません。IAS、IFRS(基準書)、SIC、IFRIC全体をまとめた広義の意味でもIFRSとよばれたりします。

設定主体ですが、IASB(International Accouting Standards Board)が現在の会計基準設定主体でIFRSを公表しており、IFRIC((委員会)International Financial Reporting Interpretations Committee))が現在の解釈指針設定主体でありIFRICを公表しています。IASBの前身はIASC、IFRICの前身がSICでしたが、それぞれ現在は存在していません。 会計基準等の設定主体とその基準の対応関係を簡単にまとめると、IASB→IFRS、(前身)IASC→IAS、IFRIC→IFRIC、(前身)SIC→SICということになります。

さらにIFRSとIFRICになる前段階の公表物というものがあります。ED(Exposure Draft)「公開草案」、DP(Discussion Paper)「予備的見解」、DI(Draft Interpretations)「指針草案」です。EDとDPはIASBからの公表物で、EDはIFRSとなる一歩手前の公表物、DPは、EDを公表する前段階のものです。DIは、IFRICからの公表物で、新たな解釈指針となる一歩手前の公表物、最終的にIFRICとなるにはIASBの承認が必要です。
IFRS,IFRIC,IAS,SIC,IASB,IFRIC,IASC,SIC,ED,DP,DIなど、ここで紹介したもののほかにもまだ設定主体などについて言葉がでてきます。
このようにIFRS関連の書籍等を読むと、3文字から5文字の英単語が頻繁に出現し、読みづらくなることもあるかと思われます。
これらの単語の区別がしっかりできていれば、今後IFRS関連の書籍をスムーズに読めるのではないでしょうか。