学校法人会計基準の改正により、資金収支計算書の内訳に活動区分資金収支計算書が加えられました。活動区分資金収支計算書の目的は、資金収支計算書の決算額を3つの活動区分ごとに区分し、活動ごとの資金の流れを明らかにすることです。企業会計でいうところの、キャッシュ・フロー計算書に相当するものとなります。

近年の施設設備の高度化、財務活動の多様化という状況に対応するために、活動区分ごとの現金預金の流れを把握する必要性から、以下の活動区分ごとに集計します。

(1)教育活動

キャッシュベースでの本業の教育活動の収支状況を把握することができます。

(2)施設整備等活動

当年度に施設整備の購入状況、財源の内容を把握することができます。

(3)その他の活動

借入金の収支、資金運用の状況等、主に財務活動を把握することができます。

上記活動区分ごとに状況を把握することで、適切な財務分析が可能となります。

学校法人会計基準の一部を改正する省令(平成25年4月22日文部科学省令第15号)(以下、新基準といいます。)が公布され、平成27年度(知事所轄学校法人については平成28年度)以後の会計年度に係る会計処理及び計算書類の作成から適用されることとなりました。

学校法人会計基準は、昭和46年制定以来、私立学校の財政基盤の安定に資するものとして、また、補助金の配分の基礎となるものとして、広く実務に定着しています。しかしながら、制定以来40年が経過し、社会経済状況の大きな変化、会計のグローバル化等を踏まえた様々な他の会計基準の改正、私学を取り巻く経営環境の変化等を受けて、公教育を担う学校法人の経営状態について、社会によりわかりやすく説明できる仕組みとし、社会への説明責任を的確に果たすこと、及び学校法人の適切な経営判断に一層資するものとすることを主な目的に今回の改正へと至りました。

この改正により、財務3表(資金収支計算書、消費収支計算書、貸借対照表)の名称変更や、活動区分を設けて経営状況をわかりやすくするなど、種々の変更が加えられています。

変更点の詳細について、今後数回にわたり確認していきます。

日銀が発表した9月の短観で、大企業の製造業以外は落ち込み、全体としては、実質的にほぼ横ばいとなりました。円安の企業の業績に対する影響で明暗が分かれたようです。

大企業の製造業は、海外生産の好調さや円安を受けた海外収益の円換算額が膨らむ効果の恩恵を受けていますが、中小企業では、円安は一般に、原材料や部品の輸入コストを押し上げ、企業にとってコスト上昇要因であり、販売価格に転嫁しなければ、経営を圧迫する事になります。

円安の悪影響は、今回の短観に表れた以上に、この先企業経営に影を落としそうです。
円相場は一時、1ドル=110円台まで進みましたが、短観で大企業(製造業)が想定した今年度のレートは1ドル=100円73銭でした。(今回、企業が回答したのは8月末から9月末までであり、この間、円は対ドルで6円以上、下落しましたが、今回の回答にまだ十分反映されていない可能性が高いといえます。しかも、日米で方向が異なる金融政策を考えると、円安は一段と進み、長期化する構図にあります。)

今では国内企業の約8割が非製造業です。昨年末以降、景気を引っ張ってきたのも非製造業であり、ここが強くならなければ、日本経済全体の底上げも賃金上昇も難しいといえます。

一方で、雇用環境は改善しています。人手が余っているか足りないかを表す「雇用人員判断指数」は、リーマンショック前の2008年3月以来初めて、全規模・全業種で「過剰」より「不足」が多くなりました。こういった国内環境も、企業のコスト上昇に拍車をかけているといえます。

中小企業では、コストの上昇を価格に転嫁する事は容易ではありません。事実、ある商工会議所のアンケートによると、円安で恩恵を受けると答えた企業は全体のおよそ1割しかありませんでした。円安は、必ずしも日本経済全体にとってプラスとはいえません。 いずれにせよ、企業には、為替の変動に負けない経営の工夫及び企業努力が必要といえます。

日銀短観: http://www.boj.or.jp/statistics/tk/index.htm/#p01

「会社法の一部を改正する法律」(以下、改正会社法といいます。)が、平成26年6月20日に成立し、6月27日に公布されています。施行日は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日とされています。この改正におけるポイントをこれから数回にわたり確認していきます。

今回は、社外取締役を置いていない場合の理由の開示について確認します。

改正会社法第327条の2では、「事業年度の末日において監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって金融商品取引法第24条第1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものが社外取締役を置いていない場合には、取締役は、当該事業年度に関する定時株主総会において、社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない。」と定められています。

これにより、上場会社が社外取締役を設置していない場合にその理由を開示する義務が課せられました。上場会社の企業統治(コーポレートガバナンス)を強化するため、社外取締役を設置することが望ましいとの考えから、このような改正に至ったものと考えられます。社外取締役を設置していない上場会社は準備が必要ですのでご留意ください。

平成26年8月20日に、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び財務諸表等の監査証明に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」が公布され、関連するガイドラインも同日付で公表されています。改正された府令等は以下のとおりです。

この改正により、新規上場時に提出が必要な有価証券届出書の記載内容に変更が生じています。具体的には、今まで直近5年間の財務諸表の記載が必要であったものが、直近2年間の記載となるなど、新規上場に伴う負担の軽減が図られています。

詳細は、以下の金融庁ウェブサイトをご参照ください。
http://www.fsa.go.jp/news/26/sonota/20140820-1.html

今回は、1号基本金及び国庫補助金等特別積立金にかかる変更点についてご紹介いたします。

旧基準においては、10万円未満の初期調度物品等を1号基本金及び国庫補助金特別積立金から除外していた一方で、指導指針では含めているといった取扱いの違いがみられていました。

そうした適用する基準による差異を解消し、実態に即した計算及び表示とするため、新基準においては、基本金及び国庫補助金等特別積立金の設定時において固定資産以外も計上できるように変更し、処理方法の統一が図られています。

新社会福祉法人会計基準について(その6)でご紹介した4号基本金の廃止ほどの大きな変更ではありませんが、留意が必要です。

今回は、新基準において導入された会計手法の一つである、「リース会計」についてご説明します。

新基準では、ファイナンス・リース取引については売買処理をすることとなりました。ファイナンス・リース取引とは、「リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引またはこれに準ずる取引で、借手が、当該契約に基づき使用する物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引」のことをいいます。上記に該当するリース物件は、法的に所有権はなくとも、経済的実質としては資金借入をして物件を購入して使用していると捉えられることから、貸借対照表に計上すべきとの考え方により、新基準においては賃貸借処理ではなく売買処理されることとなっています。

新基準移行時の調整は、以下(1)~(3)のいずれかによることとなっています。

今回は、新基準において導入された会計手法の一つである、「金融商品の時価会計」についてご説明します。

新基準では、満期保有目的の債券等以外の有価証券のうち市場価格のあるものについては、時価で評価することとされました。また、満期保有目的の債券に関しては通常は取得価額で評価しますが、債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とすることとされています。

新基準移行時の処理方法は、新基準移行年度期首に所有する有価証券のうち、時価評価を適用するものは、前年度末の帳簿残高と前年度末の時価との差額を「過年度の収益又は費用」等として調整し、償却原価法を適用するものは、移行年度期首の帳簿価額と取得時から償却原価法を適用した場合の移行年度期首の帳簿価額との差額を「過年度の収益又は費用」等として調整します。

今回は、新基準において新たに加えられた注記事項の一つである「関連当事者との取引内容」についてご説明します。
そもそも、企業会計においては、5年以上前から関連当事者に関する注記が義務付けられています。これは、関連当事者と会社との取引が必ずしも対等な立場で行われているとは限らず、会社の財政状態や経営成績に影響を及ぼすことが考えられるため、当該影響を財務諸表利用者が把握できるようにするため開示するものとなっています。
社会福祉法人においても、法人経営の透明性を高めるという趣旨から、当該注記が規定されたものと考えられます。

具体的な関連当事者の範囲や関連当事者取引の開示対象範囲は、以下のようになっています。

1.関連当事者の範囲

(1)役員(理事・監事のうち有給常勤役員に限定)及びその近親者(3親等内の親族及びこの者と特別の関係にある者)
注)特別の関係にある者の例示

(2)(1)の者が議決権の過半数を有している法人

2.関連当事者取引の開示対象範囲

事業活動計算書項目及び貸借対照表項目のいずれに係る取引についても、年間1,000万円を超える取引については全て開示対象となっています。

新社会福祉法人会計基準では、第4号基本金が廃止されました。

新基準では、基本金を法人の設立及び施設整備等、法人が事業活動を維持するための基盤として収受した寄附金に限定しており、旧基準で規定されていた4号基本金は事業活動の結果としての繰越活動収支差額から基本財産への編入を条件として組み入れることを認められていたものであり、寄附金とは性質が異なることから、新基準においては基本金として計上することができなくなりました。
よって、新基準移行時には第4号基本金は全額取り崩す必要があります。移行時の処理の方法は2つあり、以下のとおりです。

(1)原則的方法

事業活動計算書の繰越活動増減差額の部に「基本金取崩額・第4号基本金取崩額」を設けて処理する方法

(2)特例処理

「4号基本金取崩調整表」に基づき、貸借対照表上、直接「次期繰越活動増減差額」もしくは「積立金」に組み替える方法

なお、(2)特例処理を選択した場合、その旨の注記が必要となります。