平成23年改正社会福祉法人会計基準が、当年度(平成27年度)決算から強制適用となりました。社会福祉法人の担当者の皆様におかれましても対応が進んでおられることと思われます。
今回は、抑えておくべき留意事項をまとめています。
1.区分方法の変更
改正により、事業区分、拠点区分、サービス区分といった区分ごとに数字を集計することとなります。
2.注記の増加
改正により、注記事項が大幅に増えます。8項目程増加しますが、その中でも関連当事者との取引内容の注記は特に留意が必要です。
3.4号基本金の廃止
改正により他の基本金とは性格の異なる4号基本金が廃止されましたので、取崩しが必要となります。
4.新たな会計手法の導入
財政状態の透明性をより高めるため、企業会計に近い会計手法が導入されました。例えば、金融商品の時価会計、リース会計、退職給付会計、減損会計、税効果会計等です。
当年度が適用初年度の法人の皆様におかれましては、戸惑うこともあろうかと存じますが、以上の点にご留意頂き適正な財務諸表の作成を宜しくお願いいたします。
「OAG監査法人 社会福祉法人会計監査」
http://oag-audit.or.jp/shafuku/
平成27年4月3日に「社会福祉法等の一部を改正する法律案」が国会に提出されています。
この改正の理由として、以下のような状況があります。
- ・ 今日の人口減少社会の到来や独居高齢者の増加等による福祉ニーズの高まりにより、高い公益性と非営利性を備えた社会福祉法人の役割の重要性がますます増加している。
- ・ 経営組織の強化、情報開示の推進、内部留保の位置付けの明確化と福祉サービスへの投下など、社会福祉法人が備えるべき公益性・非営利性を徹底することが求められている。
今回の改正案では、経営組織の強化の観点から、一定規模以上の社会福祉法人に対しては会計監査人の設置が義務付けられています(改正案第37条)。すなわち、公認会計士又は監査法人による会計監査を受けることが必要となります。
ここで、一定規模以上とは、以下の要件のいずれかに該当する法人となる見込みです。
- ・ 収益(事業活動計算書におけるサービス活動収益)が10億円以上の法人
- ・ 負債(貸借対照表における負債)が20億円以上の法人
改正案が成立すると、平成29年4月1日から施行されますので、平成29年度の予算策定に向けて、平成28年度中には会計監査人設置に向けた準備を進めておかれる必要があるかと思われます。
「OAG監査法人 社会福祉法人会計監査」
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今回は、企業結合会計基準の改正内容について、確認していきたいと思います。
1.改正された基準
- ・企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(企業結合会計基準)
- ・企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(連結会計基準)
2.適用時期等
- 改正時期:平成25年9月公表
- 適用時期:平成27年4月1日以後開始事業年度
3.主な改正内容
- (1)非支配株主持分(少数株主持分)の取扱い
- (2)取得関連費用の取扱い
- (3)暫定的な会計処理の確定の取扱い
⇒改正の方向性として、国際的な会計基準との差異の解消
4.非支配株主持分(少数株主持分)の取扱いの改正について
(1)会計処理の変更について
- 改正前:非支配株主(少数株主)との取引は、外部取引と同様に損益取引として処理されていた。(親会社説の考え方)
- 改正後:非支配株主(少数株主)との取引は、資本取引として処理する。(経済的単一体説の考え方←国際会計基準)
具体的には、
- (1)子会社株式を追加取得した場合や一部売却した場合
- (2)子会社の時価発行増資の場合
に親会社持分が変動した際の持分変動差額の処理が変更となっている。
持分変動差額=親会社の持分変動額-追加投資額(一部売却額)
☆一部売却時の持分変動差額の計算方法の変更点
- 改正前:持分変動額(売却持分)に持分比率低下見合いののれん取崩額を含める。
- 改正後:支配が継続している限り、持分比率低下見合いののれんは取崩さない。
持分比率の変動 | 従来 | 改正後 |
---|---|---|
プラス | のれん計上 | 資本剰余金に計上 |
マイナス | 売却損益調整等 | 資本剰余金に計上 |
※資本剰余金残高がマイナスとなる場合は、利益剰余金から減額する。
(2)表示科目の変更について
i)BS表示
- 少数株主持分→「非支配株主持分」
ii)PL表示
- 少数株主損益調整前当期純利益→「当期純利益」
- 少数株主損益→「非支配株主に帰属する当期純利益」
- 当期純利益→「親会社株主に帰属する当期純利益」
5.取得関連費用の取扱いの改正について
取扱いの変わる取得関連費用
「外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等」
(ex. 紹介、助言、デュー・デリジェンス、バリュエーションその他のコンサルティング費用及び弁護士費用等)
<会計処理方法>
- 改正前:取得原価算入(上記費用は等価交換の一部であるとの考え方)
- 改正後:発生した事業年度に費用処理(上記費用は等価交換取引の一部ではなく、企業結合とは別の取引であるとの考え方)←国際会計基準
<注記>
主要な取得関連費用を注記により開示する必要がある。
注意点
上記処理はあくまで連結上の処理であり、個別財務諸表上は従来処理を継続する。
⇒よって、税務上の取扱いは従来と変わらない。
<税効果への影響>
個別財務諸表上で株式の取得原価に含まれる付随費用を、連結上は費用処理することにより差額が生じる場合、当該差額は連結財務諸表固有の一時差異に該当し、税効果会計の対象となる。
6.暫定的な会計処理の確定の取扱いの改正について
暫定的な会計処理について
企業結合に際して、識別可能資産及び負債を特定し、それらに対して取得原価を配分する作業が、企業結合日の属する会計年度決算までに確定しない場合がある。その場合には、決算時までに入手可能な情報に基づいて暫定的に決定した会計処理を行う。
<確定時の会計処理>
- 改正前:企業結合年度に当該確定が行われたとしたときの損益影響額を企業結合年度の翌年度において特別損益に計上
- 改正後:企業結合年度に当該確定が行われたかのように会計処理を行い、表示する。
2015年2月12日に厚生労働省社会保障審議会福祉部会報告書が公表されました。
当該報告書は社会福祉法人制度の見直しについての最終の報告書という位置付けとなっています。
■報告書の方向性
社会福祉法人は社会福祉事業に係る福祉サービスの供給確保の中心的役割を担うものとし、「これまで以上に公益性の高い事業運営が求められ」、法人の在り方そのものを見直す(平成18年の公益法人制度改革の内容に近づける)こととし、以下の項目に重点をおいています。
- ・経営組織の強化
- ・情報開示の促進
- ・内部留保の位置づけの明確化と福祉サービスへの投下
- ・社会貢献活動の義務化
- ・行政による指導監督の強化
具体的には、以下のような項目が盛り込まれております。
- ・社会福祉法人の内部管理を強化するため、理事会や評議員会、役員等の役割、権限の明確化
- ・サービス活動収益 10億円以上もしくは負債 20億円以上の社会福祉法人には、公認会計士の会計監査が強制
- ・監査の対象とならない社会福祉法人についても公認会計士、税理士による財務会計に対する体制整備状況の点検等を指導
- ・役員報酬の総額や役員報酬基準の公開を法令上義務付け
- ・特別利害関係者との取引内容の開示(100万円以上)
- ・内部留保を明確にし、「再投下財産額」がある社会福祉法人に対し「再投下計画」の作成を義務付け、その書類については公認会計士又は税理士による確認
上記のような改正の方向性が示されたため、今後は改正に対応するため準備を整えていく必要がありますのでご留意ください。
「会社法の一部を改正する法律」(以下、改正会社法といいます。)が、平成26年6月20日に成立し、平成26年6月27日に公布されています。施行日は平成27年5月1日です。
今回は、多重代表訴訟に関する事項について確認します。
この度の改正で、親会社の株主が、一定の要件の下で子会社の役員等の責任を追及する制度、いわゆる多重代表訴訟制度が導入されました。ここでの一定の要件とは、以下のとおりです。
- 1.完全親子会社関係の存在
- 2.最終完全親会社等(企業集団の最上位にある完全親会社等)の議決権の100分の1以上又は株式の100分の1以上の保有
- 3.責任原因事実の発生日における最終完全親会社等及び完全子会社等における、対象となる完全子会社等の株式の帳簿価額が最終完全親会社等の総資産の額の5分の1を超えること
以上の要件から、純粋持株会社の株主が傘下の事業会社の役員等の責任を追及することなどが考えられます。
「会社法の一部を改正する法律」(以下、改正会社法といいます。)が、平成26年6月20日に成立し、6月27日に公布されています。施行日は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日とされています。
今回は、会計監査人の選解任の議案の内容の決定権について確認します。
従前は、会計監査人の選解任の議案の内容の決定権は、取締役に付与されていました。本来、会計監査人は経営者から独立した立場で会計監査を実施しなければならない一方、経営者に選解任権があったため、独立性の確保を阻害する要因として問題視されていました。
今回の改正において、会計監査人の選解任の議案の内容が監査役(監査役会)の決定事項と定められたため、上記の独立性の阻害要因は軽減されたといえます。
また、前回確認した監査等委員会設置会社においても、当該議案の決定権は監査等委員会が有することとなっています。
平成27年の年頭に当たり、謹んで新年のお慶びを申し上げます。
本年も皆様のご信頼を頂ける監査法人となるよう、社員一丸となって精進する所存でございますので、何卒昨年同様のご愛顧を賜りますよう、お願い申し上げます。
皆様方の益々のご健勝とご活躍を祈念し、年頭の挨拶とさせていただきます。
「会社法の一部を改正する法律」(以下、改正会社法といいます。)が、平成26年6月20日に成立し、6月27日に公布されました。施行日は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日とされています。
今回は、監査等委員会設置会社制度について確認します。
今般の改正において、新たな機関設計として監査等委員会設置会社制度が導入されました。監査等委員は取締役で、その過半数は社外取締役である必要があります(399条の2第2項、331条6項)。また、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役は、選任や報酬決定において区別され(329条2項、361条6項)、任期も異なります(332条3項、4項)。監査等委員会及び各監査等委員の権限は、基本的には、指名委員会等設置会社(現行法の委員会設置会社)の監査委員会及び各監査委員の権限と同様ですが、それに加えて監査等委員である取締役以外の取締役の選解任等及び報酬について株主総会で意見を述べることができるものとされています(342条の2第4項、361条6項)。さらに、監査等委員会設置会社では、定款の定めにより取締役会決議事項を軽減することができます(399条の13第6項)。
監査等委員会設置会社のメリットとして、例えば以下の点が挙げられます。
- ・取締役会で議決権を有する監査等委員による監査は、監査役監査に比べてより経営監督機能を高めることができると考えられます。
- ・定款変更により、取締役会の決議で重要な業務執行の決定を取締役に委任することが可能となり、より迅速・機動的な企業経営が可能となると考えられます。
<一般労働者派遣事業・職業紹介事業の監査証明業務の概要>
一般労働者派遣事業や職業紹介事業(以下「一般労働者派遣事業等」)の新規許可及び有効期間の更新を行うにあたっては監査法人又は公認会計士(以下「監査法人等」)による監査証明が必要となる場合があります。
一般労働者派遣事業等の新規許可及び有効期間の更新を行うにあたっては一定の許可要件(基準資産要件・負債比率要件・現金預金要件)を満たす必要があります。諸事情で年度決算時に許可要件を満たすことができなかった場合に、基準資産額または現金預金額を増額することで、その後の中間決算書・月次決算書で許可要件を満たすことができれば監査法人等の監査証明を添付することで新規許可及び有効期間の更新が可能となります。
また、有効期間の更新の場合は、「監査証明」に代えて、監査法人等による「合意された手続実施結果報告書」を添付することも可能です。
なお、税理士は一般労働者派遣事業等の認可有効期間の更新に必要な「監査証明」または「合意された手続実施結果報告書」は発行できません。
<監査証明業務と合意された手続業務(AUP業務)との相違>
有効期間の更新の場合は、監査証明ではなく、「合意された手続」の実施も可能とされています。
「合意された手続」は、英語のAgreed Upon Proceduresの頭文字をとって“AUP”と略されることがありますが、「合意された手続」とは、公認会計士が依頼者(事業主)との間で事前に調査手続の詳細について合意し、その合意された手続を実施して結果を報告する業務をいいます。
監査証明業務と合意された手続業務(AUP業務)の違いは、端的に言えば、決算書全体の適正性について公認会計士が保証することが監査証明業務で、会社との間で合意された手続のみを実施し、その結果を報告するのがAUP業務、ということになります。
<一般労働者派遣事業等の許可の有効期間の更新に係る合意された手続(AUP)について>
監査・保証実務委員会研究報告第24号《一般労働者派遣事業等の許可審査に係る中間又は月次決算書に対して公認会計士等が行う監査及び合意された手続業務に関する研究報告》において、
下記のような具体的な手続き例が示されています。
- (1) 月次決算書及び年度決算書に計上されている残高を会社の総勘定元帳の勘定残高と集計突合する。合致しない場合には、差異の金額を手続の実施結果の記述において明示する。
- (2) 年度決算書に計上された税引前当期利益の金額を、当該事業年度における法人税の納税申告書別表四の写しと突合する。さらに、年度決算書に計上された法人税等の金額を当該事業年度における納税証明書と突合する。合致しない場合には、差異の金額を手続の実施結果の記述において明示する。
- (3) 上記(1)の手続実施の結果、月次決算書に計上された「現金及び預金」について合致した場合には、会社の当該総勘定元帳の残高を会社入手の自己名義の銀行残高証明書及び会社作成の手許現金有高表(金種別)と突合する。合致しない場合には、差異の金額を手続の実施結果の記述において明示する。
- (4)上記(3)の手続実施の結果、月次決算書に計上された「現金及び預金」について合致しない場合には、会社から差異金額の説明及び関連証憑の提示を受け、関連証憑に記載された内容を照合し、金額を突合する。
- (5) 上記(1)の手続実施の結果、月次決算書に計上された「売掛金」、「未払金」、「借入金」、「資本金」のうち合致した勘定残高について、総勘定元帳から、年度決算書日後、月次決算書日までに生じた残高の増減の記録から会社と合意した取引○件を抽出し、会社から提示を受けた関連証憑との突合を行い、日付及び金額の一致を確かめる。
上記内容はあくまで参考ですが、実際には、厚生労働省の所管労働局(実施結果の利用者)の関心や実施結果の利用のあり方を勘案し、帳簿記録の増減記録金額が事実によって裏付けられなかった場合に基準資産額が20百万円等に事業所数を乗じた金額を下回ってしまう程に影響を及ぼすかどうか等を勘案し、依頼者である事業主と協議及び合意の上、手続実施の内容を決定する事となります。
学校法人会計基準の改正により、消費収支計算書は事業活動収支計算書に名称変更され、その内容についても変更点があります。
従来の消費収支計算書の作成目的は、当該会計年度の消費収入及び消費支出の内容及び均衡の状態を明らかにすることにありました。事業活動収支計算書においても、その作成目的は、当該会計年度の活動に対応する事業活動収入及び事業活動支出の内容及び基本金組入後の均衡の状態を明らかにすることにあり、作成目的は同様となっています。
一方、基準改正の基本目的である計算書類の明瞭性や経営への有用性の向上の観点から、事業活動収支計算書には区分経理が導入されており、以下のような表示へと変更されています。
- (1)教育活動収支…経常的な収支のうち、本業の教育活動の収支状況の把握が可能。
- (2)教育活動外収支…経常的な収支のうち、財務活動による収支状況の把握が可能。
- (3)経常収支=(1)+(2)…経常的な収支バランスの把握が可能。
- (4)特別収支…資産売却や処分等の臨時的な収支の把握が可能。
- (5)基本金組入前当年度収支差額…毎年度の収支バランスの把握が可能。
- (6)基本金組入額…学校法人を維持するために必要な資産を継続的に保持するための組入額の把握が可能
- (7)当年度収支差額=(5)-(6)
- (8)前年度繰越収支差額
- (9)翌年度繰越収支差額
- (7)〜(9)…長期の収支バランスの把握が可能。
上記のような区分を設けることで、学校法人経営の状況がより分析しやすくなっています。