平成21年12月22日に、平成22年度税制改正大綱が公表されました。

民主党が与党となって初めての税制改正で、「第4章1.平成22年度税制改正の考え方」において明らかにされているように、「控除から手当てへ」等の観点からの扶養控除の見直し、国民の健康の観点を明確にしたたばこ税の税率の引き上げ、「新しい公共」を支える市民公益税制の拡充、納税者の視点に立った租税特別措置等の見直しなどの措置を講じられています。

資本に関係する取引等に係る税制

企業グループを対象とした法制度や会計制度が定着しつつある中、法人の組織形態の多様化に対応し、課税の中立性や公平性を確保する観点から見直しを図っている。

1)グループ内取引等に係る税制

(1)100%グループ内法人間の資産の譲渡取引等

(2)100%グループ内法人間の寄附

支出法人では全額損金不算入。受領法人では全額益金不算入。

(3)100%グループ内法人間の資本関連取引

(4)中小企業向け特例措置の大法人の100%小法人に対する適用

資本金の額等が5億円以上の法人等の100%小法人には以下の適用なし

(5)連結納税制度

(6)その他所要の措置を講じる。

2)資本に関係する取引等に係る税制

(1)みなし配当の際の譲渡損益

(2)清算所得課税

清算所得課税を廃止し、通常の所得課税に移行。その際、期限切れ欠損金の損金算入制度 を整備する等の所要の措置を講じる。また、連結子法人の解散を原則として連結納税の承認の取消事由から除外。

(3)その他

これらは1)(3)ⅱ)、(4)、(5)ⅰ)ならびに2)(3)ⅲ)を除き、平成22年10月1日から適用。

以上の法人課税関係のほか、国際課税で外国子会社合算税制等の見直しでトリガー税率の25%から20%への引き下げなども大綱によって明らかにされているが、法律として成立するまでその詳細は確定せず、内容が変更される可能性があることに御留意ください。

【IFRSの収益認識基準】

IFRSの導入をめぐっては、収益の認識基準について出荷時点から検収時点への変更が必要になることが各面で大きく取り上げられています。 収益の認識は、IAS第18号「収益」とIAS第11号「工事契約」がIFRSの主な会計基準となっており、ここで示されている「リスクと経済価値の移転」という考え方に照らしてみれば、通常、顧客の検収が終了しなければ売り手のリスク負担は解消しないと考えられ、そのことによって現在広く実務で適用されている出荷基準についての見直しが迫られている、との状況にあります。

【MOUプロジェクト】

一方、海外に目を向ければ、米国証券取引委員会(SEC)は、2014年から米国企業にIFRSを適用するか否か、2011年までに判断を下すとされていますが、その判断においては国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)が目下共同で進めているMOUプロジェクトの達成度を見極めることとされています。MOUプロジェクトの中の一つ、「収益認識」プロジェクトは、2008年12月に「顧客との契約における収益認識に関する予備的見解」というディスカッション・ペーパー(以下、「DP」)を公表し、今後、2010年第2四半期中に公開草案を公表し、2011年上半期中には新たなIFRS会計基準を公表するものとしています。

わが国では、上場企業にIFRSの適用を義務化することの可否が2012年に判断される予定ですが、義務化が決まれば、2015年にも予定される強制適用の時点で収益認識についての基準は、現行のIAS第18号等に代わって上記の新しい基準となっていることが予想されます。

【DPのアプローチ】

DPでは、従来の「リスクと経済価値の移転」等のアプローチとは異なる、新しい収益認識の考え方が示されています。すなわち、企業が顧客と契約を締結すると、その契約による権利(対価請求権)と義務(財・サービスの提供義務)の両者が認識されます。そして、財・サービスの提供によって履行義務が充足、消滅し、権利と義務の差額が生まれますが、この差額を収益として認識する、という考え方です。また、履行義務の充足は、顧客が約定資産の支配を獲得したとき、とされます。

イメージとしては、売買契約が成立した時に、資産側に対価を受け取る権利(売掛金のようなもの)が認識されるとともに、負債側に履行義務が(販売価格に基づいて)認識されます。この時点では資産側負債側同額で正味ゼロです。その後、売主が物を買主に引き渡すことによってその分の履行義務が消滅し、その分プラスの正味ポジションが生じる、すなわち、収益が計上される、というものです。
このアプローチによった場合、従来製品保証について製品保証引当金を計上していたこれまでの会計実務から、製品保証というサービスの履行義務の充足に従って、収益計上しなければならないことや、現行の工事進行基準による収益認識から、完成した一部分の物理的な物の引き渡し(財の支配の移転)がなければ、部分的な収益認識も行われなくなる、などの影響が考えられます。

IFRSの適用検討をプロジェクトとして始動している企業や、IFRSの適用を視野に入れながら新しい基幹系システムの構築を行っている企業においては、現行のIFRSのみではなく、FASBとIASBによるMOUプロジェクトによる新基準の検討状況もにらみながら、種々の可能性への対応の可否も検討していく必要があります。

国際財務報告基準(IFRS)はアドプション(導入)の流れが明確となっており、税務(特に法人税)との関係のあり方を検討する必要があります。平成21年10月2日に経団連は「平成22年度の税制改正に関する提言」の中で、「国際会計基準とのコンバージェンスの流れの中で、わが国会計基準の改定が相当見込まれることから、個別財務諸表、個別会計基準のあり方についての抜本的な見直しを含め、税と会計の基本的なあり方の整理を行う必要がある」と指摘しています。

IFRSの特徴として、原則基準や経済実体重視といわれていますが、原則に従う限りは企業ごとに会計処理や会計方針が異なることがあります。また、理論的整合性の重視に伴い資産負債アプローチや時価主義のさらなる導入が促進される結果、新たに検討されている包括利益概念は課税所得の基礎となる現在の利益概念と整合しないことは明らかと考えられます。

そこで,企業会計の連単分離という考え方の採用を検討することになります。連結財務諸表はIFRSを適用して作成し,個別財務諸表は,会社法に基づく配当金計算及び税法に基づく課税所得計算の目的に一致させるために日本独自基準で作成する方向となるのではないでしょうか。企業内部では、現在の会計情報収集・作成機能を継続的に運用させた上に、IFRS開示事項に係る会計情報の収集・作成機能を新たに追加するといった対応が求められることとなると考えられます。

2009年(本年)2月4日に金融庁の企業会計審議会から「我が国における国際会計基準の取り扱いについて(中間報告)(案)」が公表され、2009年6月30日に最終の中間報告として、「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」、いわゆる日本版ロードマップが公表され、2012年を目途にIFRS強制適用の最終決定が行われる予定となっています。
最近、IFRS関連の書籍、雑誌などが数多く出され、またセミナーなども各地で行われています。

ではそもそもIFRSって何のことをいい、誰が作成しているのでしょうか?

ほとんどの本では最初の章に記載されている内容で、読み飛ばすことも多いのではないかと思います。一方で、IFRSが順次公表されている中で,IFRSとは一体何のことをいい、誰が作成しているかをしっかり把握しておけば、今後IFRS関連の書籍を読むうえでも非常に有益ではないかと思います。そこで、「そもそもIFRSって何だろう?」について確認したいと思います。

IFRSとは、日本語で「国際財務報告基準(書)」、英語で「International Financial Reporting Standards」と言います(以下IFRSという)。基準(書)ですから、物理的には本ということになります。実はIFRSには前身となる基準書があり、IAS(日本語で「国際会計基準(書)」、英語で「International Accounting Standards」)と言います(以下IASという)。IFRSは、2009年11月8日現在第8号まで、IASは第41号まで公表済みで現在も有効でですが、今後はIFRSとして公表されるため、IASが増加することがありません。

さらにIFRS、IASともに解釈指針というものがあります。それぞれ、IFRIC(日本語で「国際財務報告解釈指針(書)」、英語で「International Financial Reporting Interpretations Committee」といいます)、SIC(日本語で「解釈指針(書)」、英語で「Standing Interpretations Commitee」といいます)です(以下それぞれIFRIC、SICという)。IFRICは18号まで公表されており、SICは32号まで公表済みで現在も有効ですが、今後はIFRICとして公表されるためIASと同様今後SICが増加することはありません。IAS、IFRS(基準書)、SIC、IFRIC全体をまとめた広義の意味でもIFRSとよばれたりします。

設定主体ですが、IASB(International Accouting Standards Board)が現在の会計基準設定主体でIFRSを公表しており、IFRIC((委員会)International Financial Reporting Interpretations Committee))が現在の解釈指針設定主体でありIFRICを公表しています。IASBの前身はIASC、IFRICの前身がSICでしたが、それぞれ現在は存在していません。 会計基準等の設定主体とその基準の対応関係を簡単にまとめると、IASB→IFRS、(前身)IASC→IAS、IFRIC→IFRIC、(前身)SIC→SICということになります。

さらにIFRSとIFRICになる前段階の公表物というものがあります。ED(Exposure Draft)「公開草案」、DP(Discussion Paper)「予備的見解」、DI(Draft Interpretations)「指針草案」です。EDとDPはIASBからの公表物で、EDはIFRSとなる一歩手前の公表物、DPは、EDを公表する前段階のものです。DIは、IFRICからの公表物で、新たな解釈指針となる一歩手前の公表物、最終的にIFRICとなるにはIASBの承認が必要です。
IFRS,IFRIC,IAS,SIC,IASB,IFRIC,IASC,SIC,ED,DP,DIなど、ここで紹介したもののほかにもまだ設定主体などについて言葉がでてきます。
このようにIFRS関連の書籍等を読むと、3文字から5文字の英単語が頻繁に出現し、読みづらくなることもあるかと思われます。
これらの単語の区別がしっかりできていれば、今後IFRS関連の書籍をスムーズに読めるのではないでしょうか。

今年度も公認会計士2次試験の合格発表の時期が近づいてまいりました(昨年度は平成20年11月18日発表)。

監査業界としても今年度の合格者数は何人か大変注目しております(昨年度は3,625人)。その理由は合格者の方の就職(特に監査法人への就職)の見通しが芳しくないと予想しているからです。

これに関するものとして平成21年7月31日に金融庁より「公認会計士試験合格者等の育成と活動領域拡大に関する意見交換会中間取りまとめの公表について」が公表されております。
この公表は、公認会計士となるためには2次試験合格、2年間の実務経験(業務補助等)及び座学研修(実務補修)が必要となりますが、近年の合格者の急激な増加により、実務経験を積む受け入れ先(主として監査法人)の不足、実務補修の場所の不足等に起因する教育の質の維持が困難となっていることを問題点としてとらえて当面の対応策をまとめたものとなっています。

主なポイントは①経済界における周知活動②合格者が経済界で活躍しやすくなるような環境整備③合格者の意識改革④教育環境の整備⑤試験の実施等です。これらの趣旨は、合格者の受け入れ先として監査法人以外の一般企業を想定し経済界への周知を進めるとともにその環境整備(制度、就職説明会等)をすすめる。逆に合格者に対しては経済界も就職先としてあることの意識改革をすすめる。また環境面(実務補修)については一般企業在籍者を想定してカリキュラムや体制を構築することとしこれに経済界も協力するということです。

公認会計士試験の新規合格者の方にとっては厳しい環境だと思いますが、監査業界の先輩として公認会計士試験の新規合格者の方の今後のご活躍を期待するものであります。

<リース取引、ソフトウェアに関する会計処理>
平成20年9月11日付で、文部科学省よりリース取引とソフトウェアに関する会計処理について通知が出され、これを受けて平成21年11月14日に、日本公認会計士協会よりそれぞれに関する実務指針が制定されています。

これらを受けて平成21年4月1日より開始する年度から、リース取引とソフトウェアに関する会計処理が変更となっています。リース取引やソフトウェアに関する日々の会計処理をどのように行っていくのかということについては、予算立案の段階あたりから検討されているのではないかと考えられますが、計算書類の開示事項まで見据えたうえでの検討も終えられていますでしょうか?

まずリース取引とソフトウェアに関して、会計処理の変更の注記が必要となりますので、本年度に対象となる取引が生じると変更による影響額の記載が必要となります。

また、リース取引を通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行った場合で、リース料総額の合計額に重要性があるときは、①リース取引開始日が平成21年3月31日以前であるもの②平成21年4月1日以降の開始し、リース契約が300万以下の場合に該当するもの、の2点にかかるリース料総額の合計額に重要性があれば、「通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行っている所有権移転外ファイナンスリース取引」として注記が必要となります。

資産総額等の観点から、重要性があるリース料総額となる法人がさほど多くないと考えられるのですが、その重要性を判定するための集計資料の準備は事前に行っておくか、決算作業のスケジュールに織り込んでおくべきです。

<監査の品質管理>
日本公認会計士協会では、品質管理基準委員会報告書第1号「監査事務所における品質管理」第76項、監査基準委員会報告書第32号「監査業務における品質管理」第39項から委託審査制度を規定し、学校法人における私立学校振興助成法第14条第3項の規定に基づく監査業務に係る審査において、「監査意見表明のための委託審査要領」を利用する場合に必要となる審査資料の様式例を、学校法人委員会研究報告第11号「委託審査制度における審査資料の様式例」として平成21年1月14日付で公表しました。

現状では審査対象業務は、文部科学大臣所轄学校法人に係る監査業務が対象となっており、平成23年3月31日を持って終了する会計年度より審査が開始される予定となっています。

<その他>
平成21年2月17日付で「第12号 学校法人における事業報告書の記載例について」が公表され、事業報告書の詳細な記載例を見ることができるようになりましたので、多くの学校法人が依拠するものと思われます。

また、平成21年4月14日付で「第13号 キャッシュ・フロー計算書導入に係る提言」が公表され、キャッシュフロー計算書の導入が急務と指摘されており、今後は計算書類に何らかの形でキャッシュフロー計算書が導入されることになると考えておいた方がいいと思われます。

内部統制評価報告制度が導入されてから、3月期決算のJ-SOX対象企業においては、その対応が2年目となり、はや第2四半期も過ぎようとしています。2年目においてはすでにひととおりの文書化が終わっており、新しく追加された事業拠点や変更のあった業務プロセスへの対応、運用テストが作業の中心となっている企業が大半ではないかと思われます。

適用初年度を振り返ってみれば、2009年3月期決算の会社では、内部統制に重要な欠陥があり、「有効でない」と表明した企業は56社となりました。これら企業の内部統制報告書をみると、その直接的な原因として、決算発表後や財務諸表監査時に重要な虚偽記載が見つかったか、あるいは大きな不正が発覚したというケースが目立って多くみられます。そして、そのような問題が引き起こされた根本原因として、人員不足、決算担当者の能力不足、モニタリング体制や統制手続の不備といった人的な側面での問題点が挙げられています。
反対に、虚偽記載は現実化していないけれども社内の評価で重要な欠陥が見つかり期末までに是正されなかったために「有効でない」と表明した会社は、むしろ少数派となっているように見えます。
このような開示事例から分ることは、たとえ文書化作業をきっちりと行っていたとしても、重要な虚偽記載や不正が発生すればその結果自体が重要視され、その原因が何かしらの内部統制の欠陥に求められて広く世間にむけて内部統制が全体として「有効でない」旨を公表しなければならなくなる可能性があるということです。極論すれば、どれだけ費用をかけ立派で完璧な評価文書を作成したとしても、ただひとつの重要な誤謬が発生してしまうことで、多大な費用と時間、労力をかけて一大プロジェクトとして行っていた活動が、社内で全く無意味なものだったとみなされる危険性があります。

「J-SOXの目的は監査法人の内部統制監査を乗り切ることである」とみる向きもありますが、問題が発生した時には「結果」責任が問われる、ということの恐ろしさからすれば、あまり的を得た見方ではないように思われてきます。監査法人と対峙するのではなく、むしろ監査人と頻繁にコミュニケーションを持ち、その知識、経験、能力をも活かして、問題が発生しそうな領域を聞き出し、社内で絶対に虚偽記載や不正を起こさせない、未然に防止するという活動に集中することの方がより実効性があるといえるでしょう。
2年目のJ-SOX対応を、企業をさらに強くするための契機とするためには、56社の問題事例から学び、メリハリを利かせて、本質的に問題が生じるケースの少ない領域や省力化できる部分については思い切って省力化し、他方で、企業内外に変化のあるところや関係会社など手の届きにくい領域については、本当にリスクが生じていないか、管理が手薄となっていないか、会計上の見積りや処理で検討しておくべき事項がないかを、大局的あるいは詳細にみて、十分に検討を行うということが必要になってくるのではないかと考えます。

2年目のJ-SOX対応の活動は、ゼロからの出発であった適用初年度とは異なった心構えと課題認識のもとに、緊張感をもって進めていく必要があるでしょう。

新地方公会計制度のスタートにより地方自治体に4つの財務諸表の開示を求めるなど、公益法人、独立行政法人、国立大学法人、地方自治体などの会計には民間企業が行う企業会計の考え方の導入が進んでいます。企業会計は、発生主義・複式簿記の考え方を取り入れ、外部への情報開示や内部での適切な意思決定に適した会計手法であります。

企業会計に基づく財務書類の作成に当っては、会計原則や資産・負債の評価基準に対する理解の促進が求められますが、会計処理に係る効率性や有効性は、業務プロセスやシステムの整備状況に最も影響されます。

OAG監査法人は、中堅組織のよさを活かして法人のニーズや実情にきめ細かく、また柔軟にサポートいたします。

平成21年6月15日、日本公認会計士協会は、電子化された監査情報を不正にコピーし漏洩した会員に対し、協会規則に基づき会員停止3ヶ月の懲戒処分が行われました。
監査基準では、「監査人は、業務上知り得た事項を正当な理由なく他に漏らし、又は窃用してはならない。」と定められており、
また、公認会計士法第27条でも、「公認会計士は、正当な理由なく、その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らし、又は盗用してはならない。公認会計士でなくなった後であっても、同様とする。」と規定されています。

そして、これらの規定に違反した者には、告訴を前提に、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処するとする厳しい刑事罰が課せられています。
監査情報の漏洩防止が被監査会社との間の信頼関係の原点であり、監査業務が円滑に実施されるための基盤となっています。
昨今監査法人に限らず、情報漏洩の事件が多発していることに鑑み、当監査法人では情報漏洩の防止に関する内部管理を厳格化し、職員に対して情報漏洩の防止をより一層徹底してまいります。

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