公益社団法人日本監査役協会及び日本公認会計士協会は、最近の一連の不祥事を受け「企業統治の一層の充実へ向けた対応について」と題する共同声明を行いました。(2012年3月29日)
http://www.hp.jicpa.or.jp/ippan/jicpa_pr/news/files/3-0-0-2-20120329.pdf
監査実務の現場におきましても、今後はより一層の監査法人と監査役とのコミュニケーションの緊密化が求められると思われます。
日本公認会計士協会より、最近の新聞等で報道されている投資顧問会社と投資一任契約を結んだ年金基金に関する年金資産の消失事案を契機として、監査及び会計の専門家として、監査業務等を通じて再発防止に寄与できるような方策について検討を行い、以下の提言がなされました。
- 提言1:年金基金の財務諸表(年金経理及び業務経理)の会計監査の活用
- 提言2:私募ファンドの監査又は監査報告書の確認
- 提言3:投資一任先の会計監査の実施
- 提言4:年金資産の運用に係る検証及び内部統制報告の利用
年金資産を取り巻く様々な財務報告(決算報告)が、透明性をもって信頼がおけるものとするために、公認会計士等による監査が一層活用されることが望まれます。それはまた、企業年金関係者の受託者責任の遂行と加入者等の保護にも資するものと考えます。
金融庁「金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン」に掲げられた、我が国新興市場等の信頼性回復・活性化策の内容の具体化に向けた取組みとして、平成23年2月に金融庁、証券取引所、日本証券業協会、日本公認会計士協会による「新興市場等の信頼性回復・活性化策に係る協議会」が設置されました。
当協議会より新規上場のための事前準備ガイドブック「上場を目指そうとしている皆さまへー会計監査を受ける前に準備しておきたいポイントー」(B5版)が作成されました。
本ガイドブックにつきましては、下記からダウンロードできますので、上場を目指されている会社様は是非参考にして頂ければ良いかと思われます。
120409_JICPA-IPOGuideBook_finish2.pdf
平成24年3月22日付で、監査・保証実務委員会研究報告第25号「不適切な会計処理が発覚した場合の監査人の留意事項について」を公表している。これは近年の上場会社において不適切な会計処理が発覚した場合の事例を基に、その多くの場合に共通する事項を整理し、監査人として適切な対応を行うための留意事項を取りまとめたものです。不適切な会計処理発覚後の時系列的な状況の整理と監査人側の留意事項等及び対応を要する事項をまとめており、企業の実務担当者を含めて理解が必要です。また、ポイントごとに簡単にして情報を発信していきたいと思っております。
平成23年4月1日以降開始する事業年度の期首以降の「会計上の変更」や「過去の誤謬の訂正」に対して、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」が適用されることとなっています。以下に対応が求められる内容を整理しました。
【会計上の変更】
本会計基準では、「会計方針の変更」、「表示方法の変更」、「会計上の見積りの変更」を「会計上の変更」としています。
1)会計方針の変更
会計方針とは、財務諸表の作成にあたって採用した会計処理の原則及び手続をいいます(→今回、表示方法は、別に定義されました)。①会計基準等の改正に伴う会計方針の変更の場合、②①以外の正当な理由による会計方針の変更の2つに分類されます。 なお、会計処理の対象となる会計事象等の重要性が増したことに伴う本来の会計処理の原則及び手続への変更、新たな事実の発生に伴う新たな会計処理の原則及び手続の採用、連結または持分法の適用の範囲に関する変動について、これら3つの事象は会計方針の変更に該当しないことになります。
本会計基準の適用後は、変更後の会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用します。つまり、遡及適用による累積的影響額は表示する財務諸表のうち、もっとも古い期間の期首の資産、負債及び純資産の額に反映させ、表示する過去の財務諸表には、当該各期間の影響額を反映させることになります。例えば、金融商品取引法の開示制度では、前年度1期分です。ただし、上記の原則的な取り扱いが実務上不可能な場合には、遡及適用が可能となるもっとも古い日から将来にわたり新たな会計方針を適用するとされています。
2)表示方法の変更
会計方針の変更時には、変更の内容、理由に加え、過去の表示期間について影響を受ける財務諸表の主な科目に対する影響額や表示されている財務諸表のうち、もっとも古い表示期間の期首の純資産に反映された過去の累積的影響額などの注記が求められます。また、表示方法を変更した場合、表示する過去の財務諸表についても当該方法を適用し、遡及的に財務諸表の組替を行います。また、組替した場合、その内容、理由、金額などを注記することになります。
3)会計上の見積の変更
会計上の見積の変更は、新たな情報によって生じるものであるとの理由から、遡及処理せず、将来にわたって変更されるもの(→当期以降の財務諸表において認識する)としています。
つまり、過去の見積の方法が見積もり時点で合理的ならば、過去の誤謬の訂正には該当しません。過去の誤謬の訂正とは、区別して考える必要があります。
また、この場合、当該見積の変更の内容、当期への影響額などを注記することとなっています。
なお、減価償却方法は、従前どおり会計方針として扱いますが、その変更は、会計方針の変更を会計上の見積もりの変更と区別することが困難な場合に該当するものと取り扱っています。したがって、会計上の見積もりの変更と同様に将来にむかって会計処理を行うことになります。
【過去の誤謬の訂正】
誤謬とは、(1)財務諸表の基礎となるデータの収集または処理上の誤り、 (2)事実の見落としや誤解から生じる会計上の見積りの誤り、(3)会計方針の適用の誤りまたは表示方法の誤りとされています。
本会計基準では、過去の財務諸表における誤謬が発見された場合は、原則として、過年度の財務諸表を遡及修正(=修正再表示)することになります。つまり、今後は、当期の損益で修正(=前期損益修正項目として扱う)することは行われません。また、過去の誤謬の内容、表示期間について影響を受ける財務諸表の主な表示科目等への影響額、最も古い表示期間の期首の純資産への累積的影響額等を注記します。
本会計基準は、今後の会計実務に与える影響は非常に大きいと考えられますが、本基準のすべての事項には、財務諸表利用者への重要性が考慮されています。また、実際の適用に当たっては、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準及び同適用指針、ならびに関連規則の詳細を確認することが望まれます。
金融庁は31日に東日本大震災で被災した企業等を対象として特例措置を発表しております。
その概要は、
(1)震災により本来の提出期限までに有価証券報告書・四半期報告書の提出が無かった場合でも本年6月まで提出期限の延長を認める
(2)震災により有価証券報告書を提出できない3月決算企業等について9月末まで提出期限の延長を認める方向で検討する
(3)「震災により」とは間接的な影響を含む
(4)臨時報告書については地震によりその作成自体が出来ない場合には、その事態が解消後速やかに提出すれば良い
となります。
詳しくは金融庁のHPにてご確認ください。
平成22年12月16日に税制改正大綱が発表されました。
基本的な方針としては、国内企業の競争力を強化するという観点から、
法人実効税率を引き下げつつも、課税ベースの拡大を図り、財源確保を図っています。
盛り込まれた法人課税の主な内容は以下のとおりとなっています。
【法人税率】
平成23年4月1日以降に適用される法人税の税率は普通法人で25.5%、
中小法人で25.5%(年800万円以下は15%)となります。
なお、法人住民税も0.87%引き下げられます。
【減価償却】
平成23年4月1日以降に取得する減価償却資産の定率法の償却率を
定額法の償却率の200%に縮小します。
【欠損金の繰越控除】
控除限度額をその事業年度の繰越控除前所得の
80%に制限他方、欠損金の繰越機関を9年に延長します(中小法人は存置)。
【貸倒引当金】
適用法人を銀行その他などこれらに類する法人及び中小法人等に限定されます。
なお、3年間にわたる経過措置があります。
【寄付金】
一般寄付金の損金算入限度額が1/2になります。
【グループ法人税制】
解散が見込まれる100%グループ法人株式の評価損を計上
できないこととなるなどグループ法人税制の整備を図ることになります。
【棚卸資産】
切放低価法は、廃止となります。なお、当初事業年度においては経過措置を設けています。
【中間納付制度】
仮決算による中間税額が6/12を超える場合には、仮決算による中間申告書を
提出できないこととなります。
その他にエネ革税制の廃止、試験研究費の税額控除の限度額の特例の廃止、
雇用促進税制や環境関連投資促進税制などが見直しまたは新設されており、今後の動きに留意が必要です。
IFRSに関して、一部に誤解を招く情報が流布されているのではないかという指摘があるなかで、
金融庁は平成22年4月23日に「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」を公表しています。
専門家でない方々にもご理解いただけるよう、正確性よりもわかりやすさに重点を置いて作成しています、
とあって非常に読みやすい内容となっております。
一部の内容を抜粋すると、
・全面的なITシステムの見直しが必要か
・監査人の対応が厳しくなるのではないか
・英語版IFRSを参照する必要があるのか
など、ちょっとした息抜きにいかがでしょうか。
平成21年9月に東京証券取引所の「上場制度整備の実行計画2009」に基づき上場規程等が改正され「独立役員」の制度が設けられ、平成22年3月1日以後に終了する事業年後に係る定時株主総会終了の日の翌日までに「独立役員」の確保が必要となりました。したがって3月決算会社の場合今年の定時株主総会開催日の翌日までに対応が必要となります。「独立役員」の制度の趣旨は一般株主と利益相反が生じる恐れのない役員を加えることにより、企業経営において一般株主にも配慮した意思決定がなされることを外形的に担保することにあります。
「独立役員」に関する情報は、指定理由や一定の利害関係を有する社外取締役や社外監査役を独立役員に指定する場合のその特段の理由や一定事項の追加開示が、定時株主総会終了後のコーポレート・ガバナンス報告書において開示が必要となります。
上場会社においては「独立役員」の制度趣旨を踏まえ、適切な人選をする準備を早急に進める必要があると思います。
平成21年12月22日に、平成22年度税制改正大綱が公表されました。
民主党が与党となって初めての税制改正で、「第4章1.平成22年度税制改正の考え方」において明らかにされているように、「控除から手当てへ」等の観点からの扶養控除の見直し、国民の健康の観点を明確にしたたばこ税の税率の引き上げ、「新しい公共」を支える市民公益税制の拡充、納税者の視点に立った租税特別措置等の見直しなどの措置を講じられています。
資本に関係する取引等に係る税制
企業グループを対象とした法制度や会計制度が定着しつつある中、法人の組織形態の多様化に対応し、課税の中立性や公平性を確保する観点から見直しを図っている。
1)グループ内取引等に係る税制
(1)100%グループ内法人間の資産の譲渡取引等
- ⅰ)一定の資産の移転(非適格合併による移転を含む)により生じる譲渡損益を、グループ外へその資産を移転等したときに、その法人において計上する制度とし、適格事後設立制度を廃止。
- ⅱ)非適格株式交換等を、非適格株式交換等に係る完全子法人等の有する資産の時価評価制度の対象から除外。
(2)100%グループ内法人間の寄附
支出法人では全額損金不算入。受領法人では全額益金不算入。
(3)100%グループ内法人間の資本関連取引
- ⅰ)現物配当(みなし配当を含む)について、譲渡損益の計上を繰り延べる等の措置を講じる。この場合、源泉徴収を行わない。
- ⅱ)受取配当について益金不算入制度を適用する場合、負債利子控除を適用しない。
- ⅲ)株式を発行法人に対して譲渡する等の場合、その譲渡損益を計上しない。
- ⅳ)無対価組織再編成の処理方法等の明確化
(4)中小企業向け特例措置の大法人の100%小法人に対する適用
資本金の額等が5億円以上の法人等の100%小法人には以下の適用なし
- ⅰ)軽減税率
- ⅱ)特定同族会社の特別税率の不適用
- ⅲ)貸倒引当金の法定繰入率
- ⅳ)交際費等の損金不算入制度における定額控除制度
- ⅴ)欠損金の繰戻による還付制度
(5)連結納税制度
- ⅰ)連結納税の開始又は連結グループへの加入に伴う資産の時価評価制度の適用対象外となる連結子法人のその開始又は加入前に生じた欠損金額を、その個別所得金額を限度として、連結納税制度の下での繰越控除の対象に追加
- ⅱ)連結納税の承認申請書の提出期限について、その適用しようとする事業年度開始の日の3月前の日とする。
- ⅲ)事業年度中に連結尾や法人と完全支配関係が生じた場合の連結納税の承認の効力発生日の特例制度について、加入法人のその完全支配関係が生じた日(加入日)以後最初の月次決算日の翌日を効力発生日とすることができる制度に改組
- ⅳ)連結納税の開始又は連結グル―プへの加入に伴う資産の時価評価制度について、その開始又は加入後2月以内に連結グループから離脱する法人の有する資産を時価評価の対象から除外。
(6)その他所要の措置を講じる。
2)資本に関係する取引等に係る税制
(1)みなし配当の際の譲渡損益
- ⅰ)自己株式として取得されることを予定して取得した株式が自己株式として取得された際に生ずるみなし配当については、益金不算入制度(外国子会社配当益金不算入制度を含む)を適用しない。
- ⅱ)抱合株式については、譲渡損益を計上しないこととする。
(2)清算所得課税
清算所得課税を廃止し、通常の所得課税に移行。その際、期限切れ欠損金の損金算入制度 を整備する等の所要の措置を講じる。また、連結子法人の解散を原則として連結納税の承認の取消事由から除外。
(3)その他
- ⅰ)適格合併等の場合における欠損金の制限措置等について、実態に応じて適用要件を見直し。
- ⅱ)分割型分割については、みなし事業年度を設けない。
- ⅲ)売買目的有価証券、未決済デリバティブ取引に係る契約等を適格分社型分割等により移転する場合の処理について整備を行う。
- ⅳ)合併類似適格分割型分割制度を廃止。
- ⅴ)受取配当の益金不算入制度における負債利子控除額の計算の簡便法の基準年度を見直し。
- ⅵ)その他所要の措置を講じる。
これらは1)(3)ⅱ)、(4)、(5)ⅰ)ならびに2)(3)ⅲ)を除き、平成22年10月1日から適用。
以上の法人課税関係のほか、国際課税で外国子会社合算税制等の見直しでトリガー税率の25%から20%への引き下げなども大綱によって明らかにされているが、法律として成立するまでその詳細は確定せず、内容が変更される可能性があることに御留意ください。